「亡命者たち」と「子守唄」
聴きおわった時、この二つの言葉が浮かびました。歌を創った人も歌う人もみんな彷徨いの中で寄り添っている。
広いユーラシア大陸を祖国とした人たちの歌には、その優しさが溢れています。それが「スラブ音楽」。
冒頭のウクライナの子守唄「夢は窓辺を過ぎて」、ドヴォルザーク「我が母が教えたたまいし歌」、そしてポーランドの
クリスマスキャロル、コサックの子守唄、そしてカッチーニのアヴェ・マリアへの、この選曲が大好きでした。
ここに漂う果てしない淋しさは、亡命者の望郷。
どんなところに行っても、胸に子供を抱いて歌えば、そこには故郷がある、と。
加藤登紀子(ブックレットから)
祈りに満ちた癒しの曲集
ロシア歌曲のスペシャリストとして研鑽を積んだ中村初恵。 ウクライナ、チェコ、ポーランドなどスラヴ各国の名曲も原語で録音。 現実のスラヴ世界は分断と対立の様相を呈しているが、世界に愛と平和を呼びかけるような選曲も見事で、 彼女の透んだ歌声で歌われ、祈りに満ちた癒しの曲集となった。
伊東一郎(早稲田大学名誉教授)
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